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【北信越ラボコラム】〈01〉柔軟化する「フルサット」という上越妙高文化共創拠点

柔軟化する「フルサット」という上越妙高文化共創拠点
北信越ラボ(北信越地域資源研究所) 代表 平原 匡

〇商業施設ではなく「横丁」のような小さな町を

 フルサット(FURUSATTO)は、コンテナを創造的に組み合わせた複合商業施設(敷地面積1,650m2、建築面積600m2)としてスタートしました。2016年6月、北陸新幹線・上越妙高駅西口前の区画整理地内に定期借地で個人の地主から借りて開業し、現在6年目に入っています。テナントは、当初は5店舗でスタートし、2021年9月では7つの飲食小売店と4オフィスのいわば「横丁」となっています。フルサットは、私が代表の北信越地域資源研究所(北信越ラボ)が事業化したプロジェクトです。私は上越市出身で、この地域で生まれ、高校卒業後東京の大学へ進学、卒業後は佐渡で暮らすことになりましたが、新駅の話を聞き、10年前に地元にUターン。そして、北信越地域資源研究所を設立しました。ここを将来人が集まる場所にしたい。そういうことをイメージして、2015年春の新幹線開業に併せて何かをつくろうと動きはじめました。
 フルサットの空間デザインは、地元出身の建築家の中野一敏氏に相談し、議論を重ねました。その結果、40ft(長さ約12m・幅約2.4m・広さ約9坪)と20ft(長さ約6m・幅約2.4m・広さ約4.5坪)の計12個のコンテナを組み合わせ、雪国特有の「雁木」という屋根付き通路で繋いだ施設を中心に開設しました。2017年からはさらにテラスエリアを拡張しました。コンテナといっても、貨物用の転用ではなく、建築確認申請に対応した特注の新造コンテナを使用し、扇形の土地を借地し通路を中心にしてコンテナを扇型に配置し、横丁のように街に開かれた造りとしました。当初は入居者探しで難航、肝心の資金調達が出来るまでの間が長くなり、テナントマッチングにも苦労しました。開業後、全国から注目を集め、視察、見学者も多く受け入れました。このプロジェクトは、お陰様で、2017北陸建築文化賞、2019 LOCAL REPUBLICAWARD佳作を戴きました。上越妙高駅前に上越妙高や新潟県各地のエッセンスが集まったコンパクトながらユニークな空間を作ることは成功したと思っています。

〇コロナ禍を経て、第2フェーズへコロナ禍に突入

 未曽有の危機。2020年春以降、新幹線の利用者の大幅減となりました。しかし、秋には新潟県から民間スタートアップ支援拠点としての認定を頂き、UIターン起業、拠点移転の相談を受ける窓口を担うべく、時代に合ったスタイルを模索しています。コロナ禍で退店も経験したものの、この11月には東京からのIターン者の出店が決まり、新陳代謝しています。当初は、地元の客層が中心でしたが、現在は、駅近に各種商業施設が立地しはじめ、ビジネスホテルは3棟建設され、当方の客層増加ともなっています。このようなコロナ禍を結果的に予見した動きとなったのは、2018年のIT企業との出会いでした。当初からフルサットにはコワーキングスペースやサテライトオフィス等を機能として含む構想をもっていましたので、以前から拠点開設のやりとりをし、当方のコンセプトとは違いはないと思い、その年の春にクラスメソッド社の入居を決定しました。サテライトスタッフは現地の出身者、彼らの働き方、代表の理念などに共感することが多かったわけです。今では支え合う存在です。無人のキャッシュレスレジレスコンビニなどの実証実験も新たな取組です。

〇「フルサットアップス」がスタート

 今年度、飲食業以外のテナントや機能を受け入れた経験を踏まえて、フルサットに多職種、多世代が集まる学びの場、沢山の人と思いをアップする「フルサットアップス」をスタートすることとしました。それはただの商業施設でとどまるものではなく、首都圏と上越妙高地域を結ぶビジネスのハブの役割として、人と地域資源を結びつけるスタートアップ拠点に変身していきます。フルサットの隣接地にできたビル(所有者別)をスタートアップ支援のセミナーや講座、貸し会議室としても活用して、我々の思いを実現していこうと考えています。
 フルサットでは、地元資本がどのように組み合わさってまちづくりを行うべきかを常に考えてきました。外部資本の流入が進んでも、地元資本のエリアが街には必ず必要であると考えています。白いキャンバスに、街の構成要素をゼロから見てきた我々にとって、確かな次のステップと確信しています。フルサットは、固定的な商業ビル開発志向が強い新幹線駅前に、柔軟性のある空間デザインとネットワーク化を進めることによって、地方都市の「文化共創拠点」を目指しています。

※一般財団法人日本地域開発センター 「地域開発」2021 秋号 寄稿 の文を再編
※挿絵を追加

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