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【北信越ラボコラム】〈04〉上越における「通年観光」を考えてみた(その2)

上越における「通年観光」を考えてみた(その2)
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

その1はこちら

 ところで、1年を通して集客をする「通年観光」とはいったいどんな状況のことをいうのか?

ひとことでいえば、「観光スポットや観光施設において、イベント、スポーツ、お祭りのような期間限定がなく、一年中観光や参加が可能な状態」なのでしょうが、「通年観光」という言葉に求められているのは、

・一時期の集客のために大きな経費をかけることなく集客が可能
・季節、気候に関係なく、来客が期待できる

という「イベント観光を否定するだけ」「宣伝方法を変えるだけ」「見た目を変えるだけ」のわかりやすい取り組みで実現できるようなものではなく、これまでの観光地経営の構造的な問題にも踏み込むような大きなテーマではないかと思っています。それはいったいどんなポイントでしょうか?

 これまでの観光施策は「大量輸送・大量消費」を前提に昭和の時代に組み立てられていました。それが1990年代のバブルの崩壊とともに「多頻度・小ロット」にシフトし、大型バスよりマイカー、団体より個人へと大きく変化してきました。そして、令和の今、アフターコロナの時代においてはさらに「密を避ける」「移動リスクを避ける」という選択肢が生まれつつあります。しかしながら、平成の30年間におこったこの大きな変化にもかかわらず、観光地・観光スポット及びその近隣に立地する周辺ビジネス(飲食・物販)は依然として昭和の残滓を残したまま、新しいものに対して排他的なエリアを形成しているケースが見られます。
 最近になってようやく、高田の街の中にも古民家をリノベしたカフェ、ショップ、オフィスが生まれ、新しい街並みが生まれつつありますが、まだまだ少ない。春日山城、高田城址公園等の上越観光の「看板」においては大きな変化を感じないと思う人のほうが多いのではないでしょうか?

そのあたりの問題点が宿泊者の参加形態にも如実に表れています。


【グラフ:上越市 延べ宿泊者数(総数)の推移】

【グラフ:妙高市 延べ宿泊者数(総数)の推移】

 これは地方創生支援のために、経済産業省と内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供している地域経済分析システム(RESAS:リーサス)で見た上越市と妙高市の宿泊者の参加形態別のデータです。まず第一に総宿泊者数(縦軸)の違い、コロナ禍以前、上越市は20万人泊、妙高市は40万人泊。そして参加形態としては、上越市は圧倒的に「一人」「男性グループ」(ビジネス客と推定)が多く、観光客を推定させる夫婦、男女グループの比率が低い。中でも決定的に違いを感じるのは「女性グループ」の少なさ。宿泊者数が半分ですから、実際にはこのグラフの幅の倍ほどの大きな差があるということです。この資料では年齢構成が不明ではありますが、観光消費をリードする「女性グループ」の宿泊者数が低いことについてはハッキリと見てとれます。観光主体の妙高と地続きの上越との客層の違いがなぜこれほど極端に違うのかを研究する必要があると思います。
 もとより、上越市内には旅館は少なく、主な宿泊施設はビジネスホテルですから、このような結果となるのは「仕方ない」と思われる方もいらっしゃると思いますが、「なぜこうなっているのか」を考えていくことが、上越の取り組むべき「通年観光」を具体的に示すために必要なのではないでしょうか?

『観光といえば「歴史」「文化」を「見学」すること』

という半世紀の間変わっていない概念をどのように「今」にアジャストするべきなのか?
観光消費をリードする「女性グループ」が「今」求めているものは何か?
それは上越の観光スポットや観光施設にあるものなのか?

そして、前回の記事の冒頭に戻りますが、
なにをすれば「白」とか「黒」とか「茶色」のイメージから脱却できるのか?

上越の取り組むべき「通年観光」について、みんなで考えていきましょう。

最後に上越にお住まいの方に質問です。

・春日山城にはいつ頃行きましたか?
・最近、高田の街を散策しましたか?
・寺町を散策したことはありますか?
・直江津D51レールパークには行きましたか?
・うみがたりには誰と行きましたか?
・そして、その体験は誰かに伝えましたか?

市民が行かないところには観光客も行きません。
市民が繰り返し楽しめないところには観光客もリピートしません。
なぜならば、市民が自信をもって自慢できないと地域の魅力、楽しさは県外の人たち、海外の人たちに伝わらないからです。
このあたりにも「通年観光」のヒントがあるんでしょうね。
(つづく)

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