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【北信越ラボコラム】〈18〉データから分かること/観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(その2)

データから分かること/観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(その2)
取締役 地域事業開発(地域DX推進)担当 横田 孝宜(よこた たかよし)

前回は当地上越市春の一大イベントである観桜会の今回の入り込み数値について当社が上越妙高駅に設置するセンサーのデータから、鉄道利用の影響は少ない(鉄道利用による来訪がないわけではないが少ない)可能性があることを言及しました。

前回の(その1)はこちら

今回は観桜会の入り込みの増加策について、当社がデータを持つ上越妙高駅の現在の状況から考えてみたいと思います。一方で、上越妙高駅をとりまく状況を当社以外のデータも参照し、簡易ですが上越妙高駅が上越市ほか地域にもたらす可能性についても述べたいと思います。具体的にはJR東日本ほかJRグループ各社(以降「JR」という)の発表数値をとりあげ、考察したいと思います。

(2)既存公表データと当社データを比較して推計する上越妙高駅鉄道利用者の傾向
■地域外からの玄関口としての上越妙高駅
観桜会の入り込みと上越妙高駅の利用状況に着目する本コラムですが、わかりやすく「観桜会(さらには上越市の観光振興の観点で)」の入り込みに新幹線駅が活用できるのでは?という観点でいくつかのデータを見たいと思います。
本年の観桜会の入り込みは実質的なアフターコロナ「直後」の観桜会として、今後の「基準」となるべきものと考えます。
次にこの基準が、基準とするための客観性を確保するために当地以外の人の動きとどうリンクしているかの把握が必要と考えますが、今回上越妙高駅が国内他地域を結ぶJR駅ということでJRが例年公表する2つのデータ、すなわち①年間の駅平均乗車人数、②年末年始の特定駅間の利用動向に「ざっくりと」注目します。

具体的に注目する数値として①上越妙高駅の平均乗車人数はコロナ禍前の2019年で約2,110人、本日時点で公表される最新データとして2021年の995人という数値があります。一方、②は上越妙高-糸魚川間の利用実績について、2020-2021年末年始と、1年はさみ2022-2023年末年始を参照しますが、それぞれ、13万人、25.4万人となっています。

2022年、2023年の上越妙高駅の平均乗車人数の値が本コラムの公開時点で明らかにされていないところで、乗車人数の推計を年末年始の利用状況の年度間の比で試みることは少々乱暴ではあるのですが、いずれにも公表値のある2021年を「軸(ものさし)とすると、特に直近2022-2023年末年始の乗車人数推計値はコロナ禍前2019年の年間1日平均乗車数を超える2,592という数字になりました。次にこの数値と当社がもつ2023年年末年始と3月時点での数値を比較するとおよ7割で推移しており、乗車平均人数を1,814人と推計することができます。

※余談ではありますが、JR公表値は「乗車」のみですので、ざっくりと新幹線利用について見る場合は、倍と考えると、3,600人程度の新幹線利用者があると推定できます。なお、この数値についても当社データから独自に推計する値と大きくはずれない数値であり、こうしたことを根拠として、今回のJR公表のデータと当社が観測するデータの整合性が実証できているものと考えます。

なお、1,814という推計値と2019年の2,110という値で比較すると、現在の上越妙高駅の鉄道利用は概ねコロナ禍前の1日平均乗車人数でみる場合、すでに8割強の状態にあるとも言えます。
アフターコロナのタイミングと、コロナ禍前の1日平均人数をみて、これが多いのか、すくないのか、また、このような鉄道利用状況と捉えた後で、観桜会の入り込みにどのような影響が考えられるのか、ということは正直これだけで論じるのは難しいのですが、このような外部データと観測データの比較や推計から、今後も鉄道利用が復調することをふまえ、観桜会を初めとする観光誘致(首都圏、関西圏への周知や旅行事業者、他交通事業者との連携等)に今一度新幹線駅の可能性を考え、その利用の観点をもつことを地域の皆さまに提案したいと考えます。

(3)(分析からの考察・提案)観光入り込みにもっと新幹線駅の活用を!
観桜会会期中の上越妙高駅付近は、年度末の人の往来は確認できた一方、駅前で目視でも状況を確認できる私たちの感覚では、観桜会目当ての観光客という雰囲気はあまり感じることはなく、異動の時期の日常的な動きに終始していたように思われます。
他方、この時期の地元紙などでは、高田本町商店街駐車場や、シャトルバスを運行した臨時駐車場などは混雑したという報道もありました。こうした状況からも、今回の観桜会は、遠方からの観光目的による来訪者よりも、もとより認知度が高い、上越地域、および近隣の長野県等、比較的近距離からの来訪者が、主に自動車によって来訪したイベントだったのではないかと推測します(駅以外のデータがあればもうすこし詳細に分析したいところです)。
その上で、上越妙高駅に目を戻してこれらの状況を考えると、大規模かつ多数の駐車場があり、大型バスの待機場所があるなど、鉄道利用による観光増とあわせ、自動車による観光入り込みにも駅が貢献できると考えることができないでしょうか。

たとえば、
・上越妙高駅周辺の駐車場を活用したシャトルバス運行
西口の市営駐車場、釜蓋遺跡ガイダンス施設の駐車場はじめ、近隣駐車場の混雑具合は会期中も目視で普段と変わらない混雑状況だった認識ですが、これらを活用することで、他の駐車場の混雑回避、もしくは観桜会入り込み増につなげられた可能性があると考えます。

・利便性の高い駅前ホテルからの観桜会会場へのアクセス方法の追加と周知策の実施
高田城趾公園に比較的近い、高田駅、南高田駅へのアクセス手段として上越妙高駅からえちごトキめき鉄道を活用すること、また上越妙高駅からのタクシー利用での送客は考えられないでしょうか。事前に地元、他地域の事業者と連携することで、入り込み効果をあげるという策です。

駅は一義的に鉄道利用のためのものとは言えるのですが、改めて考えたいのは駅がそこにアクセスするための自動車等の交通利便性も必然的に兼ね備える「人の集う場所」である点。観光誘致のための活用利便性はもともと高いと考えたいということです。

◆おわりに
当社はこれまで上越妙高駅に所在する企業として、目視による周辺の観察と、実証実験を行う上越妙高駅での分析環境の構築とデータ収集、実験レポートをリリースしてまいりました。
今回は上越妙高駅エリアから離れたイベントのタイミングについて、駅利用との関係性を分析する初の試みとして、本コラムを発表しました。今後駅という主要交通拠点と、地域における観光施設、イベント開催地等にもこれらセンサーを設置し、継続的にデータ収集をしたり、各種データを総合したりすることで、地域課題の解決、また地域の魅力の最大化に貢献したいと考えています。(了)

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