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【北信越ラボコラム】〈03〉上越における「通年観光」を考えてみた(その1)

上越における「通年観光」を考えてみた(その1)
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

 通年観光とは自治体の観光施策として短期間のイベントや行事による集客に頼らず、既存の観光スポットや入場施設、着地型旅行商品、旅ナカ体験プログラム等に一年を通して観光客を集めることを目標としています。これにより、一時的に大きなプロモーションコストをかけることなく、施設費・設備費、運営・警備などの人員にも経費を割かず、地域として持続的な観光地経営を目指すというものです。

上越市役所のホームページを見ますと、市長の提唱する歴史文化を生かした「通年観光」の取り組みとして
①雪国文化の「雁木町家」「寺町」の町並みの整備・保存をする。
②町家・古民家を整備し、観光資源として「通年観光」を実現する。
③えちごトキめき鉄道や軽便鉄道と連携して、「鉄道博物館」を作る。
④春日山城を上杉謙信公の聖地とし本格的な観光地に整備する。

とあります。

う~ん、なんだか「白」とか「黒」とか「茶色」のイメージですね~(笑)

ではなぜ今、通年観光に注目する自治体が増えているのでしょうか?
 
 通年観光の反対語は「イベント観光」。地域の自治体が観光人口を増やすためにわかりやすくカウントできるのが「祭り」「イベント」等の一過性、かつ場所が特定できるもの。観光庁が平成21年12月に策定した「観光入込客統計に関する共通基準」によると年間の入込客数が1万人以上の観光地を観光地点として選定し、全観光地点の入込客数情報を収集し、入込客数合計を求めます。現在は「観光パラメータ調査」による重複訪問者数のデータ補正を行い、観光地点内の重複は排除しており、より実数に近い観光入り込み客数を把握するようになっていますが、同一の観光客が複数の観光地点を訪れたケースでは重複の排除は困難であり「延べ入込客数」となっています。大きなイベントで短期的に集客ができれば派生して周辺観光スポットにも人が動くので観光入り込み客数は大きく見えたりしていました。なにごともわかりやすい数字の成果があると説得力も増しますし、予算もつきやすい。地域観光はこの繰り返しでこれまでやってきました。しかしながら、コロナ禍においては密を避けるイベントが求められるようになったこと、年間に数日のイベントのために大きな額の税金を投入するだけの余裕がなくなった今、年間を通じて観光客が集まる方法はないものかと考え始めた、のではないかと思います。

 また、単発のイベントは、労多く実入り少なしというもの。売上は上がっても一時的かつ一部の事業者のみ。短期間なので雇用も発生しにくい。祭り・コンサート等のイベントではオーバーツーリズム気味。大量消費型ではなく、持続性が高く、環境にも配慮したサステナブルツーリズムのトレンドとは真逆。雇用が発生しないということで、高校生が卒業とともに県外に出ていき、大学を卒業しても戻ってこない。結果、経済効果だけでなく、実施する意味も含めて、地域にもたらす価値は低いのではないか。と言われかねません。そういった意味でも「通年観光」への取り組みはこれからの地域の観光にとって、とても意味を持つものになるのではないかと思っています。(続く)

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