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【北信越ラボコラム】〈17〉データから分かること/観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(その1)

データから分かること/観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(その1)
取締役 地域事業開発(地域DX推進)担当 横田 孝宜(よこた たかよし)

前回(2022年11月)のコラムは「Wi-Fiによる人流解析」について、国のデジタル田園都市構想、および「証拠に基づく政策立案(EBPM)」といった社会的背景も捉えながら事業開発を進めていることを紹介しました。

それから早くも4ヶ月が経過し、当事業は新潟県の補助対象事業としての期間も無事終了し、3月より「人のみえる化EBPMソリューション(https://ebpm-solution.jp)」と称する自治体・公共機関向けサービスとしてリリースする運びとなり、現在は、自治体・公共関係の皆さまに一人でも多く認知していただき、その利活用についての事例とあわせ、自らもこれを活用した研究を、北信越ラボとともに行う段階となっています。

今回はそのような状況にあって、去る3月28日~4月12日の会期で開催された、第98回高田城址公園観桜会(以降「観桜会」といいます)会期中の上越妙高駅を題材に「実践的」な利活用事例として、上越妙高駅の利用状況と観桜会の入り込み状況との関連性について「みえる化」を試みたいと思います。

2回に分けて報告するボリュームが非常に多い分析コラムとなりますが、是非お付き合いいたければ幸いです。

サマリーとしては以下の3ポイント
(1)観桜会の入り込みと会期中の上越妙高駅の利用状況
====以下次回
(2)既存公表データと当社データを比較して推計する上越妙高駅鉄道利用者の傾向
(3)(分析からの考察・提案)観光入り込みにもっと新幹線駅の活用を!

(1)観桜会の入り込みと会期中の上越妙高駅の利用状況

■前年と本年を比較しながら、観桜会入り込みを考える

マスクの着用が多くの場面で自主判断となるなど「アフターコロナ」を感じさせるムードの中、「第98回高田城址公園観桜会」は2023年3月28日から、4月12日までの16日の会期で開催されました。また、会期終了後の同年4月13日には410,000人の入り込みがあったと公表されました。


▲上越妙高駅改札口前のセンサーが記録したデータの遷移をグラフ化(みえる化)したもの

前年(第97回)の入り込みが、2022年3月26日から4月17日の23日間で395,000人であったことと比較すると、会期中の単純な入り込み数として「微増」と感じさせる結果ではあるものの、①3月25日に過去最速の開花宣言があり見頃のピークが早かったこと、②会期が7日短かったことを考慮すると、来訪者の体感としては久々の賑わいを感じさせるイベントになったといえると思います。
なお、入り込み数を開催期間で平均換算すると1日あたり昨年の1.5倍近くとなり、このことも「賑わい」の裏付けとなりそうです。

■上越妙高駅の利用状況を把握する意義
さて、2015年に開業した北陸新幹線上越妙高駅前に本拠を構える私たちですが、上越妙高駅について上越市をはじめとする上越地域全体が活用しない手はないと考えます。  
地域交通の中心拠点の利用状況を常に把握することは、外部との交流人口の増減を把握することで、観光、交通施策をはじめとする市政(市勢)の基礎情報把握と、施策評価に利活用可能であるなど、地域課題の解決に役立つものと考えるからです。
そのような観点から、今回も観桜会会場とは一見離れた場所ながら、「上越妙高駅=外部からの玄関口」と考え、両者の関係性を考えることについて大きな意義を感じ、レポートしています。

■鉄道利用による観桜会入り込みへの影響は「寡少」の可能性
データに基づいた上越妙高駅の動向を示す事例として、昨年9月以降、当社では実証実験を通して、①2022年10月7日の全国旅行割発表後2週間で駅利用が最大約150%増、②年末年始の帰省ラッシュについて2022年12月29日と2023年1月4日にピークがあることを「みえる化(可視化)」してきました。
次に、これらの結果に時系列でつながる、観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況を見てみます(このグラフは駅改札付近に限定したセンサーの結果であり、これを実質的な「鉄道利用」と仮定します)。年始の帰省ラッシュ後に一度大きく観測数が減る傾向にありましたが、2023年1月下旬を底として、2月以降、少しずつ駅利用が増加する傾向が見られました。
一方、会期中の観測状況を見てみると、この期間鉄道利用は2月以降の増加傾向から、横ばいか、むしろ減少に遷移しているように見えます。この状況から、私たちは、新幹線利用と今回の観桜会入り込み誘致は寡少(観桜会の入り込みに新幹線駅の存在がほとんど影響されない)と分析するに至ります。

※補足ですが、会期中3月31日の利用状況が比較的多く見られますが、前後に続く傾向がみられないこと、同日が平日であること、また年度末最終日の平日かつ休前日という点をふまえると、観光ではなく、入学や転勤等の異動による人の移動が見られたのではないかと推測します。

■駅の東口、西口利用の状況
観桜会の会期直前、2023年3月15日より上越市の協力により、市道となる駅自由通路の東口部分と西口部分に各1機センサーを増設し、3月16日より観測を開始していますが、ここから観桜会会期中の東西口の利用状況を見てみます。

※赤:上越妙高駅(JR改札+トキ鉄改札)・水色:西口・黄色:東口

設置から日が浅いのですが、これまでの目視・体感値からも理解できるところで、今回、上越大通りに面し、脇野田駅時代からの玄関口である「東口」の利用よりも、南葉山、妙高山側である「西口」の利用状況が高いことが初めて「みえる化」されました。
西口については、妙高市にあるロッテアライリゾートのシャトルバスが定期的に往復したり、上越妙高駅がJR東日本、同西日本の境界駅という性質をもつ駅というところで、市外、県外を含む各種観光バスの発着点となるなど、「観光における乗り換え拠点」の性質があることは私たちは以前から確認していましたが、このデータでもそのような性格が現れているように思います。新しい駅の新しい玄関口の活用という点では歓迎すべきことですが、普段からも上越市というより、妙高市をはじめ他地域への「通過点」として利用されていることを考えると、駅が所在する上越市としては少しもったいない状況にあると思います。
対する東口の性格は脇野田駅時代から上越大通り(旧国道18号線)に面する主要な玄関口と考えられ、今も多くの市民がその認識をもっています。
そのような性格も分析者としてふまえつつ、今回、「市民の利用傾向が現れている」と感じた部分は、会期中の金曜日(休全日)、土曜日、日曜日です。西口と拮抗するかもしくは上回る状況から、新幹線利用で会期中に来訪した人の多くは、東口を主要な玄関と捉える人々、すなわち当地出身への帰省もしくは当地に縁のある人の来訪といった比較的通常利用の範疇にあったのではないかと当社では見ています。(つづく)

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