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【北信越ラボコラム】〈07〉上越における「通年観光」を考えてみた(その4)

上越における「通年観光」を考えてみた(その4)
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

第1回ではなぜ通年観光という言葉が使われるようになってきたかの背景

第2回では昭和の時代にできた観光のしくみを「今」にアジャストする必要性

第3回では「すべてはスマホの中に」というタイトルで旅の決め方とか、選び方が大きく変わっていること

について書き進めてきました。

今回はスマホ世代への対応として「検索結果から通年観光を考える」というテーマについて、コロナ禍前の2019年のデータを見ながら考えてみたいと思います。

前回スマホの時代であることを書かせていただきましたが、今回は「スマホで旅するみなさん」を頭に置きながら、上越はどのように検索されているのか?を切り口に、検索からどのように集客する方法が考えられるのか?について考えていきます。

上越の「今」の通年検索キーワードは「うみがたり」が圧倒的1位、瞬間1位は「観桜会」

いつどこに注目が集まっているかを「検索」結果データで分析してみました。
まず、地域経済分析システム(RESAS:リーサス)の観光目的地分析でコロナ禍前の2019年一年間のナビタイムによる自動車ルート経路検索で上越市の月別目的地別検索回数を拾ってグラフ化してみました。(目的地を検索しているということはその場所を詳しく知らない人が調べているということから、市外の人、つまり、自動車を利用する上越エリア外の観光客と推定しています。)

この結果、今、年間を通じて検索されている「通年観光」の筆頭キーワードは「上越市立水族博物館 うみがたり」(以下、うみがたり)であるということがハッキリ見て取れます。

データを見ますと、
2018年6月にリニューアルした「うみがたり」(青色の折れ線)が翌年に圧倒的な1位の観光地として、特に夏休みの観光集客に大きく貢献していること。そして、4月の観桜会(グレーの折れ線)はやはりこの地域における「上越エリア外の観光客」を集める圧倒的な大イベントであること。夏には「日本一うまいトコロテン」(緑色の折れ線)、そして冬には夏ほどの検索の絶対数は多くないものの、その中でも「キューピッドバレー」スキー場(水色の折れ線)が強いコンテンツになっているということがわかります。

ビッグキーワードの相関関係が低いという事実から考えてみる

これだけでは参考になるデータが少ないので、Google検索ではどうなっているかを見てみましょう。
Google Trends(https://trends.google.co.jp/trends/?geo=JP)というサービスを使うと誰でも簡単にできますので是非お試しください。

■「観桜会」「うみがたり」「春日山」3つのビッグキーワードについて検索の傾向を同じ2019年で比較してみました

この画像では日付が省略されているのでわかりにくいのですが、Googleの結果は週単位なのでさきほどのRESASデータよりもう少し細かく傾向がとれています。

ここでの気づきは「キーワード間の相関関係が薄いこと」
・赤線のグラフをみてわかるように「うみがたり」が年間を通じて圧倒的に検索されている。

・4月に「観桜会」(青線)が突出した検索件数を示している割に同じ時期の「春日山城跡」、「うみがたり」の検索が伸びていない。
(上述のRESASデータでは1カ月単位での集計のため同時期の「うみがたり」の検索が伸びているように見えますが、Google trendsによる週単位でのデータでは逆の結果となっています。)
⇒「観桜会」の時期のお客様はお花見のみが目的で、「春日山城跡」、「うみがたり」に行っていないのではないかという仮説が成り立ちます。

・ゴールデンウィークは「うみがたり」に引っ張られて「春日山城跡」が伸びているようにみえるがお盆やシルバーウィークには伸びていない。
⇒第一目的地が「うみがたり」のお客様は当然ファミリーが多いと想定されますが、かならずしも上越に来たからという理由で歴史観光とセットで動くというわけではないようです。

その謎を解くために、さらに2つの目的地が検索された地点のデータも拾ってみました。

あえて来訪者がピークとなった時期だけに絞り込んで「どこから(≒どこに住んでいる)検索したのか」のエリア別の比率を拾ってみた結果、検索が一番多いのは、「観桜会」は圧倒的に県内からの検索。そして、「うみがたり」は主に県内と長野から検索されています。

ここまでの検索結果を合わせて考えるとなんとなく想像できるのは、
・観桜会のお客様は毎年上越市周辺からやってくる県内リピーターだから、観桜会以外の観光スポットはすでに行ったことがあるので、あえて行こうとしない。(=ヘビーリピーター対策が必要)
・うみがたりのお客様は県外も含めて中距離の移動を伴うファミリー層なので歴史観光とは目的が異なる。(=今後リピーターにしていくための提案が必要)
という感じです。

まとめてみますと、今回は上越のごく一部の観光系のビッグキーワード検索結果を見て、あれこれ考えてみたので簡単に結論付けするわけにはいかないのですが、その中で気づいたことは「キーワード(目的地)間の相関関係が薄いこと」、そしてその結果、私の感じる一番の問題は「メインの観光地のあとにみんなどこに行ったのかがわからないこと」です。その答えを知るためには、ネット上のデータを探すのではなく、上越妙高駅や高田駅、直江津駅の人流データや市内の駐車場の混雑状況を調べる必要があるかもしれません。

どこかに行ってもらおうではなく、次に何をしてもらおうかという提案

とはいえ、当然のことながら「上越エリア外の観光客」が集まる季節やイベントは、上越市内全体に集客をする大きなチャンスです。
その乗り切れていない原因としてあげられるのは、繰り返しになりますが「観桜会」のお客様は県内客で何度も上越に来ている、そして、「うみがたり」のお客様は県外客も多いが、ファミリー層なので歴史観光はミスマッチをおこしている、ということ。
もしかすると、こういったお客様にマッチする情報は市内の別の観光スポットではなく、人気の飲食店とかカフェとかの「飲食」や公園とかアウトドア施設などの「体験」のほうに行っているのではないでしょうか。たとえば、「うみがたり」のお客様には家族連れやカップルが多いとすると、そのあとはおいしいごはんやスイーツ、ショッピングを探したりすることでしょう。また、小学生であれば夏休みの自由研究のネタを探しているかもしれません。となりますと、どこかに行ってもらおうではなく、次に何をしてもらおうかという提案が必要なのかもしれませんね。

観桜会の期間やうみがたりの来客ピークはだいたい時期がわかっているので、そこに向けて、飲食店やおみやげ、雑貨店のみなさんがこういった瞬間にのっかって自分のお店をアピールするとか、人気メニューをアップするとかの「次に何する提案」ができれば、うまく波に乗れるような気がしませんか?

お客様もスマホ片手に旅をしているのですが、お店の人たちもスマホ一つあれば速攻でアプローチをすることができる時代です。上越に興味津々のお客様がネット上を検索しまくっているこういうピークの数日間をモノにするたくましさが大切なのではないかと思います。

お客様が次に行きたくなる体験のヒントはSNSのレビューにあり

水族館をたっぷり楽しんだ後になにがしたいのか、なんて人それぞれ違うように思うのですが、「失敗したくない観光客」の行動のヒントはSNSにあったりもします。
普段、友人とのディナーの約束をしたときにお店選びで活躍するのがグルメサイトやSNSレビューですね。過去にお店に行った人がおいしそうな写真やおすすめメニューの解説までつけて書いてくれて本当にありがたい情報ですよね。
観光地での食事や体験も同様に、Googleの検索結果やインスタ、Twitter等のSNSに実際に行った人たちがどこで何をしたかのレビューが残っています。「うみがたり」や「観桜会」のピークの時期にその場所を投稿している人たちのレビューと画像・動画を追いかけて丁寧に拾ってみましょう。きっとホームページやガイドブックには決して載っていないような場所、時間であったり、おいしそうな食べ物だったり、思いがけないアングルとか色味の画像がたくさん出てくるはずです。
どこでどんな笑顔で上越の町を楽しんだのかがよくわかります。
そして、それを見た人がそれと同じ体験をしたくて、上越に訪れるというサイクルが生まれます。
今の時代、お客様が満足した「体験」が次のお客様の観光の目的に変わるのです。

今回は検索キーワードのデータをもとに「通年観光」について考えてみたわけですが、書き出したときには、通年観光とはいえたくさん人が集まっている時期があるわけだから「先に儲けられるときには儲けよう」、「一番お客様が来ているときが一番おいしい時だから、しっかりそれにのっかって地域の観光消費・時間消費を伸ばしていこう」みたいなオチを考えていました(笑)しかしながら、データをよくよく見ていくと、イベントや集客のピークでたくさんの人が来ていたとしてもうまく回遊できていないのは、お客様のニーズに合っていないキーワードがバラバラに存在していて情報のミスマッチが起きているのではないかという仮説が私の中に生まれました。それらをつなげるためになにをすべきか、どんなキーワードであれば検索に引っかかるようになるのか。そのヒントは、従来の観光データベースの中にはなく、日々刻々と更新されていくSNSのタイムラインや写真や動画の中にありそうです。「目的地」というテキストだけでなく、「なにができるか、どんな体験ができるか」という切り口でお客様に伝える方法を考え、新しい上越での過ごし方を提案していくことにより、「通年観光」で実現すべきことに少し近づけそうな気がしています。

(つづく)

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