COLUMN

  1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 【北信越ラボコラム】〈20〉<地域観光開発の現場から>上越のサイクルツーリズム考

【北信越ラボコラム】〈20〉<地域観光開発の現場から>上越のサイクルツーリズム考

【上越のサイクルツーリズム考】
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

上越妙高駅でこの秋新たにスタートした「上越妙高駅前レンタルサイクル」につきまして、オープン以来のご利用で気がついたことをまとめます。

「上越妙高駅前レンタルサイクル」につきましては、9月よりフルサットカフェで貸出をはじめておりまして、シティサイクルと電動アシスト付のママチャリをご用意してフルサットでお待ちしております。おかげさまで告知を開始してすぐにご利用いただいた方は意外な?!ことに「お城ファン」のみなさま。

上越には戦国時代から江戸時代にかけて築城された城跡がいくつも残っています。代表的なのは上杉謙信公の居城であった春日山城。そして江戸時代に入って作られた徳川家康の六男、松平忠輝の居城である高田城、現在は高田城址公園三重櫓が復元されて公開されています。一般的な観光客のみなさんはこのふたつの超有名なお城を見にいくのですが、マニアな方はもうひとつ、続日本100名城に選ばれた「鮫ヶ尾城跡」。鮫ヶ尾城といえば、上杉謙信の死去に伴う御館の乱(おたてのらん、1579年)の際に、上杉景勝が上杉景虎を追い詰め、景虎を自害させたということで有名な山城ですが、地元の人かマニアな方しか知らないお城です。そして、鮫ヶ尾城跡については最寄りに鉄道駅がなく、これまで車がなければいけない場所だったのですが、このたびのレンタルサイクル開始により、お城ファンのみなさんの中ではSNSで拡散され、毎週末にファンの方に借りていただいておりまして、どうやらとてもよろこんでいただいているようです 。

歩いていくには遠すぎる、レンタカーを借りるほどの距離でもない、自転車があればなぁ。。。みたいなニーズにドンピシャだったようですね。「走るのが目的」ではなく、「興味のあるところ、行きたいところに行く手段」としてのサイクリングの需要は確実にあります。

サイクルツーリズムというと、どちらかといえばかっこいいバイクにまたがり、気合を入れたサイクリングを想像してしまいますが、そういった「ガチ勢」ではなく、特定の趣味の領域とか、車の代わりにちょっと乗ってみるとかの「初心者」レベルでより多くの方に普及していくのが好ましいと思います。雪国新潟の人たちは普段100m先のコンビニでも車で行く方も多く、「自転車に乗らない習慣」の方が多いようです。そんな方たちにも冬の時期以外はぜひ自転車でお出かけしていただきたいものです。

そのためにも、私たちとしては上越妙高駅周辺のお店マップやこれまで気がつかなかったような新しい観光マップなどを作って利用促進を目指していきたいと思っています。

今後は訪日インバウンド需要の拡大を想定して、ガイド付きのチャリンコツアーを外国人向けに展開する予定です。すでにモデルコースが完成しており、今月中には外国人を集めたモニターツアーを実施する予定となっております。

モデルコース

A 旧北国街道ゆっくりサイクリングと寿司職人体験コース

B 城下町高田と上越人気スイーツ巡りコース

C 日本海の風を感じる鉄道痕跡めぐりサイクリングコース

そして、それに伴って地域としてもう一つ取り組みたいこと。それは、自転車でツアーガイドができる人を増やすこと。

今後、インバウンド外国人観光客が増加していくとともに、一般的な市内観光だけでなく、一般的にアドベンチャーツーリズムといわれるような自ら体を動かしてアクティブに観光したいという需要も増えていくことでしょう。また、サステナビリティの観点からも二酸化炭素を排出しない乗り物を好んで利用する外国人も多いことから、地域を自転車で散策するニーズも高まるものと思います。

外国人と街中をサイクリングすれば、これまで車で通り過ぎていたようなところに目を留め、地域住民にはあまりにも当たり前すぎて見過ごしていたような、思ってもみなかったような地域の魅力が発見されることでしょう。そんなときに街中を気軽に自転車で一緒に走ってくれる案内人の存在は不可欠。週末だけのガイドさんとして副業、アルバイトでも参加していただけます。

2026年には妙高に大きなリゾートが生まれるというニュースがありますから、今後のことを考えるとぜひとも外国語に対応できて、自転車で案内できるガイドさんの育成を今から進めた方がいいですね。

岐阜県飛騨古川に全世界から毎年数千人の外国人が集まるという「里山エクスペリエンス」さんはガイド付きのサイクリングツアーの草分け的存在。
なにげない田舎の農村をゆっくりと走りながら、地元の人たちとコミュニケーションをとりながら走るだけなのですが、そこが一番の人気のポイント、「なにげない里山の日常」が素晴らしい観光資源であることを発見させてくれています。このサイクリングツアーはまさしく全国どこでもできること。

ただし、単に自転車とガイドさんを用意するだけでできるものでなく、

・参加者とガイドの関係性の作り方

・参加者の興味がどこにあるのかを理解する能力

・日々の参加者とのやり取りの中から見つける外国人目線の魅力の発見

など、日々のガイドの中から参加者満足を高めるための工夫と努力があって初めて参加者も満足し、その結果が口コミで広がると思いますし、リピーターにもなっていただけると思います。

レンタルサイクルをきっかけに新しいサイクルツーリズムが広がっていくことを期待します。

 

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事