【北信越ラボコラム】〈11〉【取り組み紹介】上越ふるさとワーケーションによる「かかわりの再構築」
上越ふるさとワーケーションによる「かかわりの再構築」
代表取締役 平原 匡(ひらはら ただし)
ワーケーション」への誤解?
突然ですが、コロナ禍を経て、「ワーケーション」という言葉が急速に普及したが故に、広まったイメージに誤解があるなと感じています。ワーケーションは「バケーション」や「レジャー」と区別されるものです。いわゆる「休暇」ではない。役員待遇の人や経営層が「リゾートでのんびり」みたいな特別なものではなく、ワークしながらも何かしら明日からのワークライフへに向けた糧を得れる時間。当地の隣接市町村が恵まれた自然資源の中での非日常体験をベースとするワーケーションに取り組む中で、当地はあくまで「ワーク」がベースなのだろうなと想定しています。よって、地域側にもそういうファシリティをコンパクトに整える必要があると考えています。そのために地域側での情報共有やプラットホーム作りも大切でしょう。
大事なのは「かかわり」を作ること
では、当地でのワーケーションにはどのような切り口があるのでしょう?海がある、山がある、という当地得意の「上越は良いところ」「上越にはなんでもある」的なアプローチですと「趣味がサーフィンの人には絶対楽しい!」「スキー場でスノボを楽しんでもらおう!」「やはり食が素晴らしいから、キャンプ場で日本酒を楽しめるように!」と様々「ご当地」的な楽しいコンテンツを考えがちですが、ちょっと立ち止まって考えると、それは「旅」だったり「休暇」コンテンツなのです。余暇の中での着地型メニュー、バケーションであって、ワーケーションのワークとは関係ない。本来の「観光」や「旅」の領域から外に出ない。
ふるさとワーケーションは「ふるさとのような田舎を作る」というユーザー目線のテーマではなく、田舎体験でもない。地方と首都圏企業繋ぐ媒体者をターゲットにしています。ふるさと出身者が媒体となり、周辺にその人に加えて地域のファンコミュニティを作って行く。関係人口を創出する、つまり「かかわり」の創出。かかわりを作ることが出来る人探しがまず。地方側に所縁のある人材が、本社、上司、同僚の仲間に「私のふるさとってこんなところなんだ」と伝えて、繋がり、誘引して、招き入れる。そこにはあくまでワークでの「かかわり」がある。そこに、媒体者の暮らし「ライフ」があるというストーリー。友達の家、親戚の家に遊びに来るように、気軽な往来。〇〇したい人をターゲットとして発信するのではなく、媒介者を掘り起こし、水先案内人としてブラッシュアップすることで、自然に拡散していく。そんな狙いを持っています。
「上越ふるさとワーケーションプロジェクト」の可能性
「上越ふるさとワーケーションプロジェクト」ではワーケーションで 来訪した利用者に対して、上越での滞在中に、この地域を「知る」「かかわる」「住む」を切り口としたプログラムを提供することにより、上越の人・企業・お店とのつながりを深め、ここに来ればいつでも会える、なじみの店がある、落ち着く場所がある、まるでふるさとのような関係性を構築し、何度でも来てもらえる場所となることにより、ワーケーション利用者を増加、定着させる。 これにより、上越地域と首都圏企業との間の喫緊の課題である「交流機会の拡大」「関係性の構築・再構築」の一助となることを目指します。相互の関係の距離を縮める。ここで強調されるべきはニーズではなく、媒介者となる皆さんのふるさとへの想いなのです。
出身人材に呼びかけよう!ふるさとへの「かかわりの再構築」を!
上越になぜ滞在するのか?その理由は?正直言って何かの「かかわり」があることが滞在の理由。自然がある、食がおいしい、リゾート施設がある・・・それはもちろん旅に出る「理由」ですが、全国どこにでも理由がある。ワーケーションの目的はやはり「所縁」だと思います。新幹線開業8年目。上越妙高駅周辺での基礎的な宿泊機能の充実に伴い、駅前には出張ビジネス客の一時的なオフィス機能を担うコワークスペースやカフェが段々と出来てきましたが、まだまだここでの「中・長期滞在」出来るだけの環境があるわけではありません。ワークライフバケーションの「ライフ」の充実が必要。周辺観光以外の「滞在する理由」が提案できていないのは現実です。私たちは出身人材への働きかけを通じて首都圏ビジネス客の動向把握、首都圏企業の動き、ビジネス客の動向について十分に把握を進める必要があります。そのため、高校同窓会等を通じた出身人材への呼びかけは大きな一歩でしょう。ふるさとワーケーションは当地と出身人材の関係性の再構築に向けた取り組みの一歩です。
参考記事 観光庁ワーケーション推進事業
新聞記事リンク 「日本海側の拠点的な都市でワーケーションを」
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