
【北信越ラボコラム】〈23〉データから分かること/上越妙高駅開業10周年:≪再考≫地域の可能性を人流データで考える(1)
データから分かること/上越妙高駅開業10周年:≪再考≫地域の可能性を人流データで考える(1)
取締役 地域事業開発(地域DX推進)担当 横田 孝宜(よこた たかよし)
上越妙高駅は2015年3月に北陸新幹線の延伸によって開業し、今年2025年で10周年を迎えます。当社(北信越ラボ)は北陸新幹線駅が当地にできることを契機に設立し、コンテナ商業施設フルサットは新幹線開業から1年後の2016年にオープン。地域開発のデベロッパーとしての側面とならび、新幹線駅が地域に新しくできることの可能性にいち早く注目するエリアコンサルタントとして活動してまいりました。
当地上越市は各種イベントの節目が多い2025年を「アニバーサリーイヤー」と位置づけますが、本コラムでは上越妙高駅開業10周年を契機として「今の上越妙高駅」について、2部構成で報告します。
前半となる今回は、これまでも紹介してきた当社横田が代表を務め、開発提供するデジタルマネージ・ウィズエー社のWi-Fiアクセスポイントを応用した人流解析である「人の存在のみえる化EBPMソリューション」が観測・推計するデータ(以降「当社データ」といいます)を主に参照し、上越妙高駅の現在をお伝えします。次回は、今回お伝えするデータを元に今後の上越妙高駅の利活用について考える内容としたいと思います。
◆本コラムのサマリー◆
本文をAIに読み込ませて作成(一部内容やニュアンスが執筆内容と異なる記述がありますが敢えてそのまま記載します、ご注意ください)
1. 上越妙高駅の来訪動向(当社データによる分析)
- 来訪推移
- コロナ禍以降の2023年3月から、日中の10時・12時・17時台を中心に来訪者が増加。
- 来訪傾向をヒートマップで表示。
- 曜日傾向
- 平日、特に週後半の来訪者数が土日を上回る傾向(前年比200%増加する曜日もあり)。
2. 東口と西口の利用特性
- 東口
- 短時間利用が多く、主に通勤・通学や送迎に利用される。
- 西口
- 平日17~22時台の滞在が増加。ビジネス需要による飲食・購買の高まりが見られる。
3. 滞在時間の分析
- 2023年12月の平均滞在時間は20.3分、2024年12月は28.5分と若干の増加。
- 駅構内の店舗数や営業時間が限定的な現状が滞在時間に影響を及ぼしている。
4. JR公表データとの比較
- 2015年~2018年は利用者数が増加。コロナ禍の影響で2020年に大幅減少するも、2023年以降回復。
- 当社データでは、JR公表データの倍前後の来訪者数が推計されている。
5. 提案に向けた示唆
- 滞在時間を延ばすためには、駅構内・周辺施設の充実が必要。
- 短期的には展示や休憩施設の工夫、長期的には自治体と連携した駅前エリアの魅力向上が重要。
詳細やデータは以下本文をご覧ください。
第1部 データ編
≪上越妙高駅の来訪推移≫
図1は上越妙高駅改札前(新幹線改札付近・えちごトキめき鉄道改札付近)に設置する2機の当社データです。特に2023年3月以降の上越妙高駅の来訪増加の様子がわかります。
2023年3月といえば、新型コロナウイルス5類感染症移行が検討されていたタイミング、来訪傾向をヒートマップで表示すると、上越妙高駅では3月頃に10時・12時・17時台といった、日中時間帯を中心に人の往来が活発化する様子がみられ、以降日中を中心として来訪者が増加している様子がわかります(青・少ない⇒赤・多い)。
≪来訪者の「数」と曜日傾向に注目する≫
上越妙高駅は平日、とくに週後半の来訪が多い
図2・3は1日平均来訪者数(推計値)を、それぞれ2023年、2024年の月ごと・曜日ごとに集計したものです。全体として上越妙高駅は土日よりも週後半の平日に来訪が増加していることがわかります(図4は2023年、2024年通年の平日・土日の平均来訪推計)。特に2024年11月以降は、当社データで前年比200%を超える曜日もみられるような、増加傾向にある中でも特に顕著な伸びがあります。。
なお、この状況は上越妙高駅西口のコンテナ商業施設「フルサット」での観測データや、我々の感覚、目視での印象とも一致します。
≪鉄道利用と東口・西口利用の状況≫
短時間利用の多い東口・夕方滞在増加が顕著な西口
次に、上越妙高駅の改札付近の来訪(鉄道利用がと推定)に対しての、西口・東口の利用状況に着目します。
上越妙高駅の東口、西口の特徴を簡単に整理すると、表2のように表せます。端的に東口は「脇野田駅時代からの表玄関」、西口は「地域外にもアクセス利便性の高い新興エリア」ということが言えます。
来訪数は図5に示す平日データの中段(西口)、下段(東口)の赤色の濃さ、また図6の1日辺りの西口、東口の来訪推計を見るとわかりますが、平日(左図)・休日(右図)ともに西口に比較的長時間の滞在傾向があることがわかります(図5では濃い赤、図6では棒グラフの濃い緑の割合)。また直近の2024年9月以降、西口において平日17~22時台に顕著な増加が見られます。「駅周辺の宿泊事業者からの声」として挙がる具体例としてフルサットの「営業店舗・営業時間」についての照会、問い合わせをしばしばいただくことからも、ビジネス滞在者の飲食・購買需要の高まりがあると考えられます。一方、東口は朝夕の時間帯に短時間利用の傾向が見られるところで、通勤・通学、もしくは当地にビジネスで来訪する際の送迎に用いられることが多いと考えられます。
≪駅滞在時間の状況は?≫
東口と西口の利用傾向をみましたが、駅そのものの利用状況にもう一度着目します。当社データは、平均滞在時間を簡易的に算出することが可能です。実質的な滞在、飲食・購買等に費やす時間を「5分以上2時間未満」と仮定し、この範囲内で観測されたデータについて2024年12月とその前年2023年12月の平均滞在時間を算出・比較すると、2024年は28.5分であったのに対し、2023年は20.3分と若干の増加がみられます。
この滞在時間の長さをどのように評価するかについては、少し古いですが、jeki駅消費研究センターが2018年度に1都3県居住の20~30代の女性を対象とした「駅ビル回遊行動調査」というものを参考に考えます。これを参照すると、駅ビルの平均滞在時間は51分とあります。さらには、買い物意欲があるひとよりも、買い物意欲がないひとのほうが、滞在時間も長く、購入金額も高いと結論づける内容となっています。
類似データが他にないことから、上越妙高駅と首都圏の駅ビルの例を比較することになってしまいますが、現状駅構内にある店舗の数、また営業時間が限定的な現状(早朝・夕方以降に営業する店舗がほぼない)は、冒頭の図1のとおり、上越妙高駅の18時以降に人の存在が減る傾向からも明らかです。大前提として、新幹線駅を通じて当地に観光やビジネスで人がいままでよりも多く来訪したり、関心をもってもらう人が増えてほしいのであれば、当地の玄関としてもう少し長時間そこに滞在できるようなバラエティのある店舗や施設があることが理想的でしょう。短期的に難しいのならば、展示や、休憩施設などにもうひと工夫をこらすほか、駅前の案内や長期的には駅前の魅力アップに自治体、地域いずれもが取り組み、駅に滞在・回遊してもらう仕組みづくりを考え、実行していくことも必要と思います。
≪(参考)JR公表データとの関係性≫
JR東日本の公表するデータから、年度別上越妙高駅の乗車平均に関するデータを以下のとおり整理しました。
2015年度(開業年度)から2018年度は、定期外・定期ともに増加傾向、新型コロナウイルスによる行動自粛が(第4四半期:1~3月)に影響したと思われる2019年度から2022年度までは減少がみられます(2020年は初年度比・前年比ともに4割近くまで落ち込む)。
2021年以降回復の兆しがありますが、2023年のデータおよび2024年末の指定席予約状況(12/11時点前年比130%)、ならびに当社データ、さらに目視等、感覚も含めると、すでに2025年1月時点で上越妙高駅でも「コロナ禍以前に回復」という状況が確実におきていると推測できそうです。
なお、上越市交通政策課は「北陸新幹線上越妙高駅の利用状況」ページにて、2018年度以降のデータが長らく掲出されませんでしたが「令和2年度~6年度北陸新幹線上越妙高駅の利用状況」というデータを公表しています。このコラムの公表時点(2025年1月27日時点)で、2024年9月迄のデータがありますが、このデータの2023年度を平均すると、JR東日本公表の平均乗車数1993のおよそ倍前後で推移しています。
(後半へ続く)
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