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【北信越ラボコラム】〈09〉上越における「通年観光」を考えてみた(その6)

上越における「通年観光」を考えてみた(その6)
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

 通年観光についてのコラムは今回でいったん最終回です。
前回は善光寺さんの例を参考に、リピーター観光客の行動に大きな変化が起きている場所ではいったい何が起こっているのかを紐解くことで、「空間の価値を利用して、新しいデザインで新しい過ごし方を提案できれば、そこに新たな可能性を見いだせる」という提案をさせていただきました。前回の第5回はこちら。

第1回~第4回の過去リンクは以下
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第1回ではなぜ通年観光という言葉が使われるようになってきたかの背景

第2回では昭和の時代にできた観光のしくみを「今」にアジャストする必要性

第3回では「すべてはスマホの中に」というタイトルで旅の決め方とか、選び方が大きく変わっていること
第4回では前回は検索エンジンにもアジャストすべきことが見えているという話

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 今回はこの気づきに対して今後何をすべきか、通年観光を目指すにあたり不足しているのは何なのか?について、リピーター観光客を「観光目的」と「おでかけ目的」に分けて分析してみたら、面白い絵が見えてきたのでそちらをもとにお話を進めさせていただきます。

 まずは、私なりに観光消費行動の「主目的」を分類してみました。
タテ軸は消費のタイプ・・・上が贅沢な旅行であったり、「せっかく来たんだから」のように財布のひもが緩んでいるタイプ、下に行くほど現実的でお手軽にお気軽に何度でも消費するタイプとします。ヨコ軸は右へ行くほど、あまり機会がないから思いきって行く特別な旅だったり、今日しかないとか今しかないという季節だったり、イベントだったりするもの。左に行くほど日常生活のど真ん中とか日常生活で行ける範囲の行動というざっくりと4象限に分けてみました。

「贅沢な非日常」は熟年~高齢者の昔ながらの旅行、「お手軽なおでかけ」は若年層・ファミリー層

 右上の象限は一度の消費額が大きい海外旅行や高級リゾート、飛行機を使っていく旅行や日帰りでもディズニーランドのように消費額が大きい非日常消費。最近ではキャンプの贅沢版であるグランピングなどもこちらに分類されます。贅沢感のあるリゾート列車雪月花はここに分類される感じです。。
右下の象限はここまで来たからには行っておきたいところ、立ち寄りたいところや季節限定、イベント限定など常に楽しめるわけではないが、比較的お金をかけずに楽しめるシーンを想像してください。うみがたりや観桜会、春日山城址等はここに分類されます。どちらかというと昭和の時代にされた観光スポットが多いのが特徴。高田城址公園はタテ軸では無料なので一番下、ヨコ軸では観光客も市民も受け入れているので真ん中に位置するといったところです。
 左上の象限は日常生活の中での誕生祝や記念日などに高級レストランに行くとか、コンサートやライブに出かけるとかの消費が高くなる行動。
 左下の象限は日常生活の領域であり、観光の余地がほとんどないゾーンとなります。

同じリピーターでもゾーンによって全く消費の仕方が異なる

 こうやって「主目的」だけを行動種類別にはめてみると右上の贅沢な旅行・観光行動をとっている人は一度の旅行の中で高級な宿に泊まり、豪華な食事をとることで旅を楽しむ傾向にある、主に熟年層から高齢層を中心とした旅慣れた「熟年観光リピーター」をイメージできます。女性グループが「せっかくだから」と言っておみやげをたくさん買ったりするイメージもありますね。
一方、お手軽に観光を楽しむ右下の象限の人たちはお金がかからない、安くて何度も楽しめる観光やお出かけを好む若年層からファミリー層を含む「エリアおでかけリピーター」をイメージできます。
 マトリックス上で分けてみるとわかるのは右上のゾーンと右下のゾーンではまったく消費スタイルも違えば世代も全く違うということがわかります。

ゾーンごとにマッチした「次の目的」の提案が必要なのでは?

 この4象限マトリクスを作ってみて気がついたのですが、
右上の「主目的」が非日常的な贅沢消費にある場合、「次の目的」を提案するときにはやはり同じように「お金を出してでも楽しめるゾーン」からの提案のほうが向いているのではないか?
このゾーンの方々に昭和のままの無料の観光でバスとか車でササっと見学するだけにしないで、どうすればここでお金を落としてもらえるかを考えるべきではないでしょうか?
そして逆に右下のリピーターは、「主目的」がお気軽にお安くお出かけをしたいという人たちなので「次の目的」を提案するときには贅沢な提案ではなく、「お金をあまりかけない」映えスポットやスイーツ、食べ歩きなどの提案のほうが向いているのではないでしょうか?
「熟年観光リピーター」には「熟年観光リピーター」が消費する可能性のある提案。
「エリアおでかけリピーター」には「エリアおでかけリピーター」が消費する可能性のある提案。
それらがマッチしないと「主目的」が終わると次のエリアに行ってしまうか、自宅に帰ってしまうのではないかと気がついたのですが、いかが思いますか。

熟年観光リピーターに提案すべき特別な体験

 それはいったいどんな提案領域なのかを「黄色いエリア」のところに書いてみました。この「黄色いエリア」は右上も右下も現在、サービスが空白地帯になっているゾーンにポジションしているということが課題かと思います。逆に言えば、ここに該当するサービスが「今までなかったんだ~!」と気がつきました。(自分では結構な発見だと思ってます(笑))

 上から行きますと、「熟年観光リピーター」が、主目的だけで帰らず、また来てくれるようにするために提案すべきことを「リピートしたくなるゾーン」としてくくりました。ここで必要なキーワードは「非日常感」「贅沢感」「限定感」「特別感」。特別感が実感できるような文化体験や食の体験等のバリエーションが多ければ多いほど、地域に滞在する、地域で消費する可能性が高くなると思います。
 昨今、ニューツーリズムとか、体験観光とかいわれているサービスはここに属すると思いますが、それを単品の「主目的」として造成してしまい失敗しています。「主目的の延長戦で提案する次の目的」とすることできっとサービスがつながっていくことでしょう。

エリアおでかけリピーターに提案すべき日常の中にあるおしゃれな非日常空間

 そして、右下の「エリアおでかけリピーター」が「リピートしたくなるゾーン」ですが、こちらはまさに今回のコラムを通じて書かせていただいた「スマホを持った観光客」の求めていること。さらには前回のコラムで書かせていただいた善光寺さん周辺のオシャレなカフェにリピートしている若年層の姿にぴったり合うところ。ここでは近隣エリアからのお出かけリピーターのみならず、地域の中の人(住民)であっても「非日常感」「適度な距離感」「参加型体験」「SNS共有」等のキーワードで集客が成立する場所であったりします。従来の観光データベースには載っていない新しいお店やサービスの情報を提案する必要があるゾーンです。SNSをじっくり見ていると答えが浮かんでくるのかもしれません。

地域住民にもお出かけリピーターにも支持される右下の「リピートしたくなるゾーン」

 おそらくここでいう右下の「リピートしたくなるゾーン」の選択肢が多いところが今風の観光地だったり、若年層が楽しめる場所なんだと思います。街中をブラブラ歩いたり、気になるお店に入ってみたり、「かわいい」ものを探してみたりする何気ない時間の過ごし方ができる「非日常空間」が好まれているようです。
右下のポジションとしてイメージできるお店としては、ちょうどテレビ番組の「せっかくグルメ」で紹介されるようなお店。従来の旅番組で出てくる地元地元したグルメではなく、地域の皆さんにとっての日常的な人気店ながら、外からくる人たちにも自慢したくなるような気持ちのいいお店。焼肉とかステーキとか唐揚げとかラーメンとかの全国どこにでもあるメニューだけど、地元出身者のお店だったり、地産地消にこだわっていたりすると観光のついでに行きたくなる「次の目的」のお店になりうると思います。

【まとめ】リピーターがまた来たくなる、もっと来たくなることが結果として通年観光につながる

今回のコラムを通じてお伝えしたかったポイントは、
〇主要観光スポットの昭和型観光(団体型・通過型)からの脱却
〇全員がスマホ片手に観光する時代であること
〇全員がリピーターであることを前提に提案すべきこと

そして、今後に向けてできることしては、
〇「目的地」検索ではなく、新しい上越での過ごし方としてなにができるか、どんな体験ができるか」という切り口での提案
〇 歴史的観光資源や町並景観そのものの観光価値は大きく変わるものではないので、その場、その空間の価値を利用した新しい体験の提案
〇 昭和のまんまではなく、そこを「非日常」の場としてリピーターが落ち着ける場所や「いつもとちがうこと」「みんなとちがうこと」を発信できる場所に変えていける可能性
〇 それぞれの提案はぜいたく消費型の「観光リピーター」とお手軽消費型の「エリアおでかけリピーター」に大別され、それぞれ別のデザインで「次の目的」としてニーズに合わせたものを提案していく必要がある。

そして、これらの取り組みを重ねることにより、「リピーターがまた来たくなる、もっと来たくなる上越」へと変化させていくことが結果として通年観光につながる、と考えております。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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