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【北信越ラボコラム】〈24〉データから分かること/上越妙高駅開業10周年:≪再考≫地域の可能性を人流データで考える(2)

データから分かること/上越妙高駅開業10周年:≪再考≫地域の可能性を人流データで考える(2)

取締役 地域事業開発(地域DX推進)担当 横田 孝宜(よこた たかよし)

上越妙高駅は2015年3月に北陸新幹線の延伸によって開業し、今年2025年で10周年を迎えます。当社(北信越ラボ)は北陸新幹線駅が当地にできることを契機に設立し、コンテナ商業施設フルサットは新幹線開業から1年後の2016年にオープン。地域開発のデベロッパーとしての側面とならび、新幹線駅が地域に新しくできることの可能性にいち早く注目するエリアコンサルタントとして活動してまいりました。

当地上越市は各種イベントの節目が多い2025年を「アニバーサリーイヤー」と位置づけますが、本コラムでは上越妙高駅開業10周年を契機として「今の上越妙高駅」について、2部構成で報告します。

後半となる今回は、前回紹介した当社データほか各種データを踏まえ、今後の上越妙高駅の利活用についてデータの利活用に関するサンプル、モデルという意味もこめ、政策、施策についての提案、提言をしたいと思います。

◆本コラムのサマリー◆

本文をAIに読み込ませて作成(一部内容やニュアンスが執筆内容と異なる記述がありますが記載します、ご注意ください)

1. 上越妙高駅の現状と課題

  • 駅の滞在時間は2024年で平均28.5分だが、首都圏の駅ビル平均51分と比べると(ある意味当然ではあるものの)少ない印象。
  • 駅内の商業施設は少なく、営業時間も日中に限定されていることが原因と考えられる。
  • 地域の観光、交通の玄関口と考えるなら、駅の役割は鉄道利用だけでなく、地域と地域外の交流点としての性格を持たせる「機能(とりくみ)」の必要がある。

2. 短期的な提案

  • 臨時販売や軽食の提供
    • 西口エリアの夕方以降の滞在者増加に対応し、キッチンカーや地元農産物の販売を促進。
    • 神奈川県逗子市の「ドリームキッチン」のようなキッチンカーのレンタル施策を参考にする。
    • 「Nibako」など移動販売ツールのレンタルや補助事業を従来の企業・開業補助に加えて推進。
  • 改札前通路の活用
    • 地元ハンドメイド作家や農産物販売の出店を誘致し、地域と観光客の接点を強化。

3. 長期的な取り組み

  • 駅の交流拠点化
    • 北海道木古内駅の事例を参考に、広域連携による観光コンシェルジュの育成や拠点づくりを検討。
    • 観光案内所や駅前施設を活用し、観光情報の提供と地域資源のプロモーションを強化。
  • 地域住民の交流の場としての活用
    • 駅前施設が地域住民も使えるものとして整備し、地域住民と訪問者双方の利用を促進。

4. データに基づく戦略

  • 地元商工会や自治体と連携し、データを活用した施策を立案。
  • 滞在時間や来訪者の傾向に応じて柔軟に施設運営やサービス提供を調整。
  • 上越妙高駅を「地域の玄関口」として発展させるための具体的なビジョンを共有。

5. 総合提言

  • 上越妙高駅開業10周年を新たなスタートとし、地域全体で「駅の拠点性」向上に取り組む。
  • 地域の現状をデータで再認識し、行政・民間・住民が連携して具体的施策を実現する。

詳細は以下本文をご覧ください。

第2部 提案・提言編

≪駅・駅周辺エリアの開発について≫

コラム前半では、当社データが観測するデータから、上越妙高駅の2024年の平均滞在時間が28.5分であることを示す一方、別の調査で首都圏の20~30代女性の駅ビルの利用時間が平均51分というまとめもあり、購買額も買い物意欲がなく、滞在時間が長い人の購入金額が高いという調査があることを紹介しました。

駅はいまや鉄道利用のためだけのものではなく、地域の人と地域外の人との交流点としての性格をもつなかで、開業10周年の上越妙高駅は当地の地域の交通拠点として成長しつつも、駅内の店舗、商業施設が非常に少なく、営業時間もほぼ日中に限定されている状態が継続しています。

ここまでのデータがあり、地域の玄関口としての拠点性を高めるのであれば、これを生かし、駅に魅力的なコンテンツをそろえ、地域のショールームとする施策を地域で展開することを考えるタイミングなのではないでしょうか。

特に西口の特に夕方以降の滞在の増加傾向を見ると。短期的な取り組みとして、駅、駅前で軽食や、地元農産物などの臨時販売を自治体、観光部門が誘致を試みてはいかがでしょうか。自治体、地元商工系組織の取り組みとしては、神奈川県逗子市では商工会がドリームキッチンというキッチンカーのレンタルをする取り組みがあります。また地元農産物や、加工食品自体、駅が地域外から来訪するひとが多い「玄関口」の特性にマッチする取り組みと思います。

幹線沿線地域の課題に詳しい青森大学の櫛引素夫教授によると、東北新幹線八戸駅内の取り組みとして地域のハンドメイド・アクセサリー作家有志の皆さんが関係各所と交渉し出店している事例があるとのこと。

上越妙高駅の改札口前の通路(脇野田通り)は「市道」として管理されており、一定の広さのスペースもあるため、こうした取り組みに自治体が協力することで実現は可能と思われます。

中期的には、移動(臨時)販売を駅内、あるいは駅前で車や、キッチンカーを展開できるようルールを整備すること。また、開業に関するオフィス補助だけでなく、そうした販売ツールを所有、レンタルする補助事業等を創設することで、新幹線駅前ロータリーでの「臨時販売」を可能、促進することはできないでしょうか。

フルサットがレンタル拠点にもなっているダイハツ工業の移動販売レンタルサービス「Nibako」は1日からのレンタルが可能であり、所有することなく、イベントやケースごとにレンタルすることが可能ですし、コスト面もいまや設備ありきではありません。こうしたツールや新たなサービスを認識理解し、利活用促進に関する制度整備(補助金や一部費用負担)や利用促進の取り組みをたとえば自治体や、地元商工事業者が行っていくことは、単に上越妙高駅の振興策のみならず、地域全体にも応用可能でメリットのある取り組みと考えられます。

また、フルサットというコンテナ商業施設というデベロッパーの立場としては、小売事業者、チェーン、フランチャイズ事業者が駅前の立地を魅力と感じている一方で、すでに過去のデータから利益モデルとして実績のあるパターンに当てはまるか否かで、出店のよりどころとするところで、上越妙高駅は新興地域である故、なかなか既存のデータやパターンに合致せず、進出の対象にならないケースも出てきました。こうしたデータの不足を手厚い補助や支援策で当面補う施策がもとめられると感じます。

他方、長期的な取り組み例としては、駅という拠点性をいかした交流拠点化もあらためて考えたいところです。北海道新幹線の木古内駅は2016年に開業しましたが、木古内町は、「新幹線開業を契機とした近隣自治体との広域連携による交流人口の拡大」をテーマに、広域観光コンシェルジュの育成や、近隣自治体が連携出来る拠点作りを行っています(リンク1リンク2)。このような取り組みの成功事例、また課題といったものを情報収集し、上越妙高駅の観光案内所や駅前施設に開設することを実現させることで新幹線駅の機能や価値向上を考えることができないでしょうか。

一方、上越市の最南部に位置する上越妙高駅を地域住民の集まる商業エリア化する考え方もあるかと思います。私が訪問した金沢以西の北陸新幹線の新駅、越前たけふ駅では、鉄道利用者が行き交う一方、駅前隣接の道の駅(二次交通とのアクセスを考えた駅づくりと思う)で多くの地元の人が駅そばほか飲食店に並び、食事を楽しむ様子を見かけています。ここではその他新鮮な地元農産物や海産物のほか、土産品もならびつつさながらスーパーマーケットの様相で私も電車をまちながら施設をまわって特産品や観光情報を目にし、お土産購入も楽しむことができました。

≪提案・提言・・・まとめ≫

コロナ禍を通じて、人々の生活様式は変化したものの、移動という動きが回復していることは上越妙高駅も例外ではないことが各種データからもあきらかです。
一方、上越妙高駅・駅周辺エリアに視点を置く場合、そうした人の動きに対応する、地域の施策(新幹線駅、駅周辺の利活用)の立案、実施やエリアの活用についての具体的なビジョン(この町・地域をどのようにしたいか)がなく、当然アクションについて、行政、民間いずれもについて足りない状況です。
当地上越市においてはIT起業の誘致に熱心であり、駅前のオフィス化、誘致に対する動き、首都圏、関西圏からの起業のサテライトオフィス開設に関する動きも成果というまでにもうすこし時間がかかるように感じるところですが、データからみると、発着地としての拠点性向上(乗り換え・宿泊に対応できる飲食・購買機能)を実現させる店舗、各種サービスの誘致が企業誘致と並行して必要と考えます。
冒頭で記したとおり、当地上越市は2025年を「アニバーサリーイヤー」としていますが、上越妙高駅開業10周年に際してのあらたな10年のスタートとして、自治体、また地域住民がデータや現状を再認識し「地域と人と経済の玄関口としての上越妙高駅」の可能性をそれぞれの立場で、時に連携して議論し、具体的施策にむけて取り組めることを願ってやみません(了)

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