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【北信越ラボコラム】〈06〉上越における「通年観光」を考えてみた(その3)

上越における「通年観光」を考えてみた(その3)
取締役 観光事業担当 野添 幸太(のぞえ こうた)

第1回ではなぜ通年観光という言葉が使われるようになってきたかの背景

第2回では昭和の時代にできた観光のしくみを「今」にアジャストする必要性

について書き進めてきました。

今回は「すべてスマホの中に」というテーマで書かせていただきます。

 前回お示したとおり、上越市の宿泊参加形態の現状からみると、上越市は圧倒的に「一人」「男性グループ」(ビジネス客と推定)が多く、観光客を推定させる夫婦、男女グループの比率が低い。中でも妙高市と決定的に違いを感じるのは「女性グループ」の少なさ。

 上越には歴史も文化もあるし、おいしいものもたくさんある。雁木の街並み、山の景色、海の景色、鉄道風景、里山風情、伝統工芸もある。一般的にいう観光要素はすべて整っているのです。

 なぜ彼女たちの選択にひっかからないのでしょうか?

 私の仮説としては、スマホ一つで簡単に情報が収集できたり、SNSを通じてどこでだれがどんなことをしているのかが瞬時にわかったりする時代になった「今」、旅行や観光に出かけようとするときに検索しているのは「目的地」ではなく、「目的になるかどうか」なのではないかということです。

重みづけがなく、多すぎて選べない検索エンジンの問題

 たとえば一般的な観光情報サイトでは、トップページで「見る」「食べる」「遊ぶ」のタブをクリックするとその地域にある観光スポット名とちょっとした説明と小さな写真とが、どういう理由かわからない順番に延々とリストされます。選ぼうとしても重みづけがないのでその目的地のことを知らない人にとっては絞り込むことすらできない。
例えば、言語が通じない知らない海外の国の観光情報サイトで検索すると思ってください。検索窓があっても何を入れていいかわかりませんし、ジャンルで絞り込んでもすべて均等に並んで一覧で表示されるので、いったいどこが行くべきところなのか選べなかったという経験がみなさんにもあるのでないでしょうか?「検索」ってそんなところに限界があったりするのです。
そのことをスマホ超ヘビーユーザーの若い人たちは体感しているので、もっと賢く、もっと直感的に選ぶすべを持っているというわけです。

若年層のメインの「検索エンジン」はGoogleではなく、インスタグラム
 
 そこで、私が最近知って結構驚いたこと!
「20歳を中心としたスマホネイティブな世代のみなさんへのアンケート結果」によると、観光情報を調べるときの彼らのメインの「検索エンジン」はGoogleではなく、インスタグラムであること。

<以下、楽天LIFULL STAYホームページより引用>
楽天LIFULL STAYが15~25歳の会員を対象にした「若者の夏の旅行に関する調査」の結果。調査期間は2022年7月1日~8月1日で、回答数は661名。
旅行の情報はどこで集めているかを複数回答で聞いたところ、「Instagram」(62.8%)、「Google・Yahooなどの検索サイト」(54.8%)がともに半数を超えました。次いで「旅行情報まとめサイト」(45.5%)、「旅行予約サイト」(34.6%)も3分の1以上が使っていると回答し、幅広いツールを通して情報を収集していることが伺えます。

<以上>

こんな時代なんですね。
インスタグラムが一番になった理由はきっと、誰がなんのために作ったのかわからない情報がGoogle検索のように何百万件も検索結果として出てもらっても困る。ということでしょう。それよりも、インスタグラムであれば、自分がフォローしている、自分の信頼している人がフォローしている人たちが体験した情報が写真や動画で発信されている、しかもコンパクトにまとめてくれている。だから、とっても判断しやすい。ということなのでしょう。
忙しくて、時間が少ない旅行中だからこそ、快適に、悩まず、これから行きたいところを「失敗しない」で見つけたいということですね。

選ぶ基準は「映える」こと。色とかセンスとか、そしてシェアしたくなるかどうか。

 Googleの検索結果は文字ばかりですから、直感的に判断しにくいですよね。
今回のアンケートは20歳前後のいわゆるZ世代と呼ばれる人たちのデータですが、おそらく30歳前後まで同じような感覚の方が多いのではないでしょうか。
インスタグラムを利用されていない方にはわかりにくい話ですが、「映える写真」で有名なこのサービスですが、ほとんど文字情報はなくて、写真か動画でコミュニケーションが図られているのです。ですから、「いいね」というのはほぼ「いい写真かどうか」「おしゃれかどうか」で判断して、少し書いてあるコメントで納得するという使い方かと思います。

ということでわかってきたのは、
今の時代、どこに行くかを決めるときには、有名だとか、知ってるとか、検索上位だからという判断で決めるのではなく、写真や映像を見て直感的に色とか美しさ、センスのよさとかに響くところや体験とかが重視されているということです。
実際に行って感動した。驚いたものを写真にとってその場で共有する行為はもはや旅の目的の一つとなっているといっても過言ではありません。しかも、みなさん写真を撮るのも動画を撮影してまとめるのもとても上手ですから、見ているだけでも結構楽しめますし、そこに行ってみようと思う、という流れができているんですね。

今回の気づきから今後の観光集客、観光プロモーションの視座として大切なことをまとめますと、

<インスタの教え>

目的地を売ろうとするのではなく、目的を提案することが大事。

有名だから、知ってるから、みんなが行ってる場所だから行きたくなるのではなく、「映える」かどうか。「映える」にはいろいろな意味があります。そこには「今」、どんな楽しみがあるのか、どんな驚きがあるのか、何を体験できるのか、みんなで盛り上がるのかなどなど、写真や動画を使って伝えることにより、そこに行きたくなる=目的にしてもらえるようなアプローチが大事。そして、シェアにつながるしかけも大切です。
ようするに「地名」ではなく「どんな体験ができるところなのか」です。

シェアできることが前提。次の人にお知らせしてくれるありがたいメディアだととらえる。

テレビも見ない、新聞も読まない、これまでの観光プロモーション手法では捕まえきれない新しい動きをするターゲットがスマホメインの人たちなのですが、一度シェアしてもらえれば、その場で何百人、何千人に魅力を発信してくれるメディアでもあります。

そして、おまけのヒント
これって、地元の若い人たちも同じじゃないでしょうか?

前回の最後に
———-
市民が行かないところには観光客も行きません。
市民が繰り返し楽しめないところには観光客もリピートしません。
なぜならば、市民が自信をもって自慢できないと地域の魅力、楽しさは県外の人たち、海外の人たちに伝わらないからですよね。
———-
と書かせていただきました。
地元の若い人たちは、新しいお店、新しい体験ができるものがあれば、観光客よりも先に体験して、いいものだったらシェアして発信していますよね。。。
実は結構、ヒントは地元の皆さんの「日常」の中に潜んでいるのかもしれません。

これらの気づきを観光プロモーション手法として盛り込んでいくことが必要な時代。
それは、「すべてはスマホの中にある」というわけです。

(つづく)

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