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【北信越ラボコラム】〈22〉データから分かること/【前年比較してみた】観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(2)

データから分かること/【前年比較してみた】観桜会会期中の上越妙高駅の利用状況について(2)

取締役 地域事業開発(地域DX推進)担当 横田 孝宜(よこた たかよし)

前回は、「第99回高田城址公園観桜会(以下、「観桜会」といいます)」開催期間中の来訪者数の公式発表数値から、来訪者数微増の原因を、同時期の当社観測データによる上越妙高駅利用状況との比較というアプローチで考察しました。
新幹線駅の利用増加の割合(当社分析値で期間中2割以上増)に対して、観桜会の増加率がわずかにとどまっているところで、旅行会社のアンケート結果も参照しながら、少なくとも来訪者増に対する取り組みのアプローチとして新幹線駅の利活用を促す地域外へのPRの不足について言及しました。
今回は、観桜会の地域外へのPRの不足を考える上で、観桜会直前、2024年3月16日の出来事である「北陸新幹線敦賀延伸開業」の日までさかのぼりたいと思います。

(3)2024年3月16日以前と以降の上越妙高駅利用推移は「ほぼ変わらない」

次に、今後10年の北陸地域の鉄道利用、人の流れを変えるであろう北陸新幹線敦賀延伸開業。しかしながら、当社データから見る限り、当地での延伸による影響はほぼ見られません。

グラフ上の赤い点線は敦賀延伸開業日(3月16日)を示しています(開業日を含む土曜日に○)。開業日以降、多少の来訪数の上下はありますが、直後、また約2週間後観桜会の開催期間にも「明かな利用増」は確認できません。

3月16日は延伸開業先の福井県をはじめ石川県、富山県など北陸地域の沿線各所で開業イベントが行われました。新潟県内の新幹線駅としては糸魚川駅でイベントが開催されたものの、上越妙高駅では敦賀延伸開業を祝う幕の掲出にとどまりました。そのような状況もあり、開業日週末はデータ的にも「いつもの週末」と変わらなかったようです。
観桜会が毎年春に開催されること、今回の北陸新幹線の敦賀延伸開業も2020年度にスケジュールが確定していたことから、この機会を生かすための施策検討や実施計画にあたり準備期間は相応にあったはずですが、もし、当地が観桜会はじめ、各種イベントを行う意義として、「多くの人に来訪してもらうことを期待する」ものであるならば、新幹線を今後の重要な交通・交流拠点と捉え、生かそうとする意識に欠けているといえないでしょうか。
観光来訪者を増やす、企業を誘致する、移住を促進するなど、県・市・事業者など、地域に関係する人々がさまざまな取り組みは行ってはいるのでしょうが、一方で当社が駅の利用動向に関するデータの継続的な取得を必要と考え、事業化し、実際に分析を重ねていくことでますます感じることは、当地上越市はもちろんのこと、新潟県全体、そして私たち地域住民の駅の活用意識がまだまだ薄いこと、また施策の評価、改善の動きに乏しいということです。

(4)≪提言≫交通拠点としての上越妙高駅の活用と広域連携の促進を

これまでのデータと分析から、「観桜会に上越妙高駅の来訪が限定的である(大きく関係していない)」という現状は明らかです。当社(北信越ラボ)は、従来から上越妙高駅の拠点性に注目し、その利活用を提言してきました。それ故、駅を利活用することで観桜会の来訪者数を増やせるとまでいうつもりはないのですが、観桜会の来場者数が微増にとどまる中で、市外県外からの玄関口の一つである上越妙高駅発着の観桜会行きシャトルバスが依然企画されないなど、交通拠点を生かした取り組みがなかなか生まれない状況に疑問を感じます。
観桜会などの観光イベントに限らずとも、上越妙高駅の拠点性に関連して、行政単位を超えた広域の取り組みが必要ということも改めて訴えたいところです。上越妙高駅は地理的には上越市の南部に位置し、スノーリゾートへの送客拠点として機能していますが発地は上越市、目的地は妙高市であるため、連携が不十分です。えちごトキめき鉄道の利活用を含め、妙高高原などのスノーリゾートと上越市の海との連携が期待されますが、現在は明確な施策がほとんどありません。
上越市が掲げる「通年観光」の観点からも、市単独で年間を通して人々が訪れる仕組みを作るのではなく、海や山へのアクセス利便性が高く、各種交通にも通じる上越市、上越エリアの利点を生かす観点も必要ではないでしょうか。そのために積極的に妙高市や同じ新幹線駅を持つ糸魚川市との連携を強化する取り組みも必要と感じます(前述のとおり妙高市の関係者は連携できればという具体的な声もあります)。隣接自治体や地域との連携に重きを置き、相互の強みを生かした取り組みを進めることが、地域全体の発展につながると考え、アクションをしていく必要があります。
そもそも地域のためにならないこと、良くないことをしようとする自治体、事業者ほか地域の皆さんは皆無だと思っています。しかし現状は「それぞれが理解しうる範囲で、それぞれが思うよいこと」をバラバラにやっているように思います。

(5) おわりに

4月13日の土曜日、会期も終盤でしたが、暖かな晴れた午前中にシャトルバスで会場を訪れ、家族と楽しい時間を過ごしました。
久しぶりにゆっくりと花見ができたことで以前と印象が変わったことがいくつかあります。お酒を飲んで大声をだす人や、もめ事、事故などを見かけることがありませんでした。シートを引いて弁当や出店のものを食べる姿は、ほぼ家族連れでした。親目線でいえば、よくも悪くも人でごった返す過去のイメージが払拭され、小さな子どもたちを安心して連れて行けるなら、こういうほどほどの人で賑わうイベントも魅力と感じました。
価値観の多様化や情報化社会の進展で、どこかに多くの人が殺到するということは起こりにくい中で、地域がなにを強みとし、何を大切にして取り組んで行くかというデザイン思考は今後益々必要になるでしょう。総じてデータをテーマにしたコラムですが「来訪者数が成果」ではなく、「取り組みの一側面・評価指標」という考え方になっていくことを期待します(了)

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